プロトウングラトウム(持久力)

あなたは走っている! 仲間と一緒に全速力で走っている。
大地が瑤れ大気もまた振動していた。
あなたには何が起きたのか理解することは出来なかった。
地球的規模の異変などという概念を理解するにはあなたの脳はあまりに貧弱だった
のだ。
あなたより小さく弱い生き物が走っていた。
あなたよりずっと大きくあなたより強い生き物も走っていた。
何がどうなったのか、何故、自分がこんな目に合わなくてはならないのか。
あなたは走りながら懸命に思いを巡らした。
自分の選んだ道は間違いだったのだろうか
それとも単に運が悪かっただけなのだろうか?
混濁した意識に何かが語りかける。
あなたは進化の大きな流れから外れたのです。
そして他の多くの生き物達も・・・
プロトウングラトウムであるあなたにはその言葉の意味を理解する力は無かった。
いや仮にそれだけの知能があったとしても考える時間が無かった。
轟音と共に大地が裂け、あなたはまっさかさまに暗闇の中に落下した。
アーケオメリックス(持久力)

身体が異様に重かった。意識が妙に薄れていた。
僅かな時間、気絶していたことに気づくにはしばらく時間がかかった。
どうなったんだ・・・?
あなたの小さな脳髄は必死で答えを捜している。
何かが間違ったのだろうか?
どこかで道を間違えたのだろうか?
あなたには理解出来なかった。
いま自分が感じている感覚が寒さであるということすらあなたには
理解出来はしないのだ。
鉛色の空から白く小さな何かが落ちて来るのが見える。
エクトコヌス(持久力)

あなたは飢え、そして周囲の仲間も皆飢えていた。
いたる所でいさかいが起き、血が流される。
そんな中で争いに加わらなかった何匹かの仲間がフっと顔をあげた。
ナンダロウ? ナニカオトガシタゾ・・・
それは行く手の山並から聞こえて来る低い地鳴りだった。
高山に降り積もった雪は氷河を成し、それがいま不気味な鳴動とともに
移動を開始したのだ。
年を重ね幾分知恵のついた何匹かが異変を悟り警戒の声をあげた。
だが内輪の争いに夢中に成っている群れの大部分は動こうともしなかった。
そして次の瞬間、あなた達、エクトコヌスの群れは巨大な白銀の怪物、
氷河の先ぶれである雪崩に一気に押し流されてしまった。
太古の地上に舞落ちる粉雪はゆっくりと、そして確実にあなたの、
アーケオメリックスの身体を覆っていった。
プロトスークス(持久力)

あなたの決定は間違いでは無かった。
プロトスークスに進化したあなたは三畳紀の終わり起こった絶滅の危機を
乗り越える事が出来たのだ。
同種、異種の様々な恐竜の死をしり目にあなたは生き延びる事に成功した。
あなたとその一族をもし現代人が見たら多分ワニだと思うだろう。
細長い躯に長い尾、やはり長細い口にびっしりと生えた鋭い歯。
現代も行き続ける最大級の爬虫類、ワニ・・・
だが残念な事にあなたは進化の本流の末に生まれい出た鰐類とは別種の生物に
なってしまったのだ。
次の時代に迫り来る大絶滅。
あなたには残念ながらそれを乗り越える力は残されてはいない・・・
プロトスークス・・・
あなたと仲間達の名は最も現在の鰐に近かった恐竜として語り継がれていくのだ。
ヒアエノドン(持久力)

かなりの月日が流れた。
周囲の景色は大きく変わり、生き物の姿もまた変化した。
だがあなが姿を変えることはなかった。
変えずとも充分に生きていくことが出来た。
あなたと一族は生態系の中に確固とした地位を築くのに成功したのだ。
だが平穏な繁栄は長続きしなかった。
あなたがたを獲物と狙う恐るべき怪物が出現したのだ。
そいつらは見かけは大して強そうではなかった。
ヒョロヒョロとした身体を華奢な二本の足で支え、耳障りな声で吠える
その生き物がとても自分達より強いとはあなたには思えなかった。
さがそいつらはとてつもなく凶暴でずる賢かった。
棒の先に鋭く尖らせた石片をつけた武器を手にした怪物は大群を成してあなた達を
襲ったのだ。
鈍い傷みを感じながらあなたは地面に倒れた。
赤黒い血が下草を染めあなたは急速に意識が薄れるのを感じている。
グガーッ!
獲物をしとめた興奮に怪物・・ホモ・エレクトゥスはおたけびをあげた。
彼らは自分達の今日の夕食が後にヒアエノドンと呼ばれる生物であるとは
露とも知らず洞窟へと凱旋する。
エドモントサウルス(体力)

あなたは数在る同種族の中でも卓越した体躯と生命力を獲得した。
群れを成し水辺で暮らすあなた達の種族は豊富な水草や水面に繁茂する藻を
食料とし仲間の数を増やして行った。
群れの仲には時折地上に上がり高く繁った松葉やたわわに実った果実を
食べるものもいた。
だが全地球規模で起こった大変動は楽園とも呼べるこの地域さえ見逃しては
くれなかったのだ。
すさまじい振動と共に陥没した大地の中に呑込まれたあなたが自然の気まぐれに
因って再び地上に現れた時、そこは既に見慣れた川辺ではなくなっているだろう。
風にそよぐ牧場には見たこともない生き物がのんびりと草をはみ、
彼方の山なみさえその姿を変えている。
「こいつはすごい!
カモノハシ竜の中でもこいつの身体は飛び抜けてでっかいゾ」
もの言わぬ化石となったあなたを発見した男の一人が叫んだ。
「新種だナ、名前はなんとつけよう?」
「白亜紀末期のエドモント層から見つかったんだから・・・
エドモントサウルスにしようぜ」
あなたはもう一度あの心地よい水辺に、ゆったりと流れる太古の川面に
身を任せたいと思うが残念なことにその願いは永久にかなわないのだ。
ノドザウルス(持久力)

頑丈な装甲で身体を守るようになったあなたの種族は白蟻を主食として除々に
その数を増やして行った。
ずっと後に出現するアルマジロに似た生態系を占め、
白亜紀末期の世界で目立たないが確たる地位を獲得したのだ。
さほど驚異となる天敵も存在しないあなたがたの未来は地味ながら
安定しているかに思えた。
だが災厄は密やかにそして着実に迫っていたのだ。
寒さ・・・それはちっぽけなあなたの脳が感じる初めての感覚だった。
相変わらず活発に地面をはい回る白蟻達と違い、巨大化したあなたの種族は
急激に低下する気温に適応する事は出来なかった。
四肢は次第にマヒし意識は遠のいて行く。
動けなくなったあなたの身体には無数の昆虫が群がり、
頑丈な装甲の隙間から容赦なく侵入して来る。
虫ケラが、餌にしか過ぎなかった微小な生き物たちが今度はあなたを
餌食にしようとしているのだ。
ノドザウルス・・
後に人間の古生物学者がそう命名する巨大な恐竜はゆっくりと歴史と食物連鎖の
輪の中に呑込まれて行った。
ポラカンサス(体力)

まったく変化の無い一日が、そして同じように変化の無い一年が過ぎていった。
いや、生態系の中に適応し巨大化と厚い外皮で外敵の脅威から免れた
あなたにとって数千万年の歳月さえ無意味なものだった。
そして今・・・白亜紀の地表は急激な変化の時を迎えていた。
あれほど豊富に大地に満ちていた食物。
柔らかく食べやすかった草は姿を消し、新たに勢力を広げだした植物を
あなたの消化器系は受け付けなかったのだ。
毒々しいまでの緑に囲まれ、飢え疲れたあなた水辺へと近づいて行った。
例え喉の渇きを癒すことが出来たとしても、それは迫り来る死から
一時免れただけに過ぎないのをあたなは本能的に感じ取っている。
ポラカンサス
白亜紀が生んだ巨大な曲竜類は今ゆっくりと滅亡の時を迎えていた。
ポラドクス(体力、攻撃力)

あなたは追われている。
全てのものに追われている。
あれほどあなたの一族に協力的だった気候も周囲の環境も今や恐るべき敵となり
単なる獲物に過ぎなかった小動物たちまでが弱ったあなたを狙っているのだ。
長い逃亡による疲労で憔悴し、飢えと渇きで意識のもうろうとなったあなたは
ぼんやりと考えている。
どこで間違ったのだろう・・・・?
何がいけなかったのだろう・・・?
だが全てはあまりにも遅いのだ。
後悔も残酷な運命に対する怒りも全ては空しいのだ。
ポラドクス・・・
後の世であなたにつけられる学名など知ったところで何の意味があるだろう。
ディプロドクス(体力、攻撃力、知力)

進化したあなたとその一族は白亜紀中期の地表で最大級の体躯を獲得した。
豊かな水量を誇る大河は豊富な食物をもたらし、
緩やかな流れは時として襲って来る捕食者からあなたがたを守ってくれた。
だが残念な事にあなたの選んだ道は進化の本流から外れていたのだ。
あなたはそれて今後数代に渡るあなたの子孫達は今の繁栄を享受し続けるだろう。
だがその後に待っているのは歴史の檜舞台からの強引で無情な退場勧告なのだ。
ディプロドクス
ブラキオサウルスと並んで白亜紀を代表する巨大な草食動物は無心に水草を
食べ続けている・・・・
ルシファーの元で「働く」

気がつくとあなたは暗闇の中にいた。
ルシファー
「愚か者め!おまえは私の奴隷として一生この
闇の中で暮らすのだ。」
「ハハハハハ・・・・」
あなたの進化は終わった